山の神(鈴鹿市)

  • 祭り:山の神
  • 開催日時:1月6日・12月第1日曜日
  • 開催地:土師神社(三重県鈴鹿市土師町558)
  • 生物:カシ類
  • 流域:鈴鹿川下流

 

山の神
  年2回、ドンド火を焚き、山の神に感謝するお祭りです。土師町には、土師神社と西土師神社があり、それぞれの地区に分かれておこなわれます。それぞれの神社でドンド火を焚き、賑やかに過ごします。
 現在では作成されていませんが、かつて祭りの際には、山の神が作成されていたとの事です。三重県教育委員会がまとめた報告書によると、毎年新しく作られる山の神は、1月6日の早朝に若衆宿(東土師地区で当番制)において、樫の木の股木で作られます。夫婦神として、2柱作られますが、男神は三又の股木が用いられており、そのうちの1本が男性器をあらわします。
 20~25センチ程の長さに切った股木に顔を書き、白紙の着物を着せます。それぞれに男女の区別をつけ(男神に刀を挟む、女神に口紅を塗るなど)、藁で作った嫁入り道具とともに若衆宿に飾られます。その後、御神酒の振る舞いや餅まき、土師神社に人形と嫁入り道具を飾り参拝するといった嫁入り神事をおこないます。神事後は、ドンド火を焚き、餅を焼いて食べた後に、人形と嫁入り道具をドンド火に入れて燃やしました。

出典:三重県の祭り・行事_三重県教育委員会


〇カシ類
 樫の木と記されている植物は、カシ類という樹木であり、ブナ科の高木の常緑広葉樹の総称で呼ばれています。広葉樹には紅葉し冬に葉が落ちる落葉広葉樹と、冬でも葉が落ちずに緑の葉を付ける常緑広葉樹があります。調査の中では、人形に用いられるカシ類を特定することはできませんでした。
 木編に堅いと書いて「樫」と記すように、カシ類は堅く、強靭さを要求する材木として知られており、カシ類を示す植物として、アカガシ、シラカシ、ウバメガシ等が挙げられます。鍬や木刀といった細長いながら強い力が加わるような材木や、かつては荷車の台車や車輪といった強度と耐久性が必要な材木として利用されてきました。
 木材を生産する目的で造られた人工林における国内樹種は、真っすぐに長く成長し、また加工も容易なスギやヒノキが主に生産されています。針葉樹と違い、広葉樹、特にカシ類といった常緑広葉樹は成長が遅く加工も手間が掛かり、また需要も少ないため、材木として利用されるカシの類の材は高価なものが多く、利用される広葉樹は安価な輸入材木が多用されていました。

出典:日本有用樹木誌_伊藤隆夫/佐野雄三/安部久/内海泰弘/山口和穂
出典:令和3年度 森林・林業白書_林野庁


〇SDGs学習の発展可能性
 近年になり、輸入量の減少や家具やフローリング用といった材に対し国産広葉樹を使用したいという需要の高まりにより、国内の製材用材としての広葉樹が注目されています。
 また、人工林において単種のみの植栽がおこなわれてきましたが、その地域の環境に合わせた針葉樹と広葉樹の混交林や広葉樹林化の必要性が高まっています。これらは森林の持つ災害防止の機能や土壌保全の機能を発揮するだけではなく、植生の多様化に伴う生物多様性の増加へ繋がります。