- 祭り:粥占い、おき炭
- 開催日時:2月14日
- 開催地:菅原神社(三重県鈴鹿市国分町811)
- 生物:カシ類
- 流域:鈴鹿川中流
〇粥占いとおき炭
この神事では、その年の作物の豊凶と天候を占います。作物の豊凶を占う神事を粥占いと言い、3本の棒を組み合わせたやぐらに鉄鍋をぶら下げ、炊かれている粥でおこなわれます。もともとやぐらは、一基でしたが、参加者の増加(粥は参加者に振舞われる)により、現在では3基で炊かれます。3基のやぐらの内、1基に直径約1.5cm、長さ約10cmの12本の竹をひもで結び、横並びにしたものを鍋に入れ、竹筒の中に入った粥の量で占います。
また、粥を炊いている火の中に竹と同じ状態にした樫の木を入れ、12本の木片毎のその焼け具合から月毎の天候を占います。粥占いは他の多くの地域でもおこなわれていますが、粥占いの際に木片の焼け具合から占う(菅原神社では「おき炭」)例は少ないです。近隣では、「火試し」として、松坂市小阿坂町の阿射加神社でおこなわれています。
出典:三重県の祭り・行事_三重県教育委員会
出典:三重県における「粥占い」神事_久保さつき
〇カシ類
樫の木と記されている植物は、カシ類としてシラカシやアラカシ等のブナ科の高木の常緑広葉樹の総称で呼ばれています。調査の中では、おき炭として用いられる樫の木を特定することはできませんでした。
常緑広葉樹は、冬の間も葉を落とさないため、寒さ対策として葉の表面をクチクラという物質で守っています。クチクラの輝きにより、照葉樹とも呼ばれます。温暖な地域における植生の遷移(せんい:植生の変化)は、主にマツ林から始まり、陽樹(日の光を好む)、常緑広葉樹の高木が多くを占める陰樹(日陰でも成長できる)の森へと変化します。
カシ類は比較的温暖な地域に見られ、薪炭材や材木として利用されてきました。伐採頻度がある程度おこなわれる場合、森林は陽樹である落葉広葉樹林となり、萌芽更新(切株からの芽による生育)で、需要が賄われます。高い場合、アカマツ林となります。落葉広葉樹林より伐採頻度が低い場合、カシ類を含む常緑広葉樹林が維持されます。また、落葉広葉樹林が利用されなくなった場合、遷移により常緑広葉樹林へと変化をします。
出典:里山の生態学_広木詔三
〇SDGs学習の発展可能性
この神事において、いつ頃からカシ類が使われたのか、何らかの意図がありカシ類が使われたのか、本調査では、特定する事はできませんでしたが、カシ類の使用について以下の2つの事が考えられるのではないでしょうか。
それは、適度な伐採または伐採をしてこなかったことにより、維持されてきたカシ類が自生する森がある。もう一つが、身近な森として利用されてきた落葉広葉樹林が利用されなくなり、遷移によりカシ類が自生する森があるという事です。
この2つの過程は異なるものの、人による森林の利用に大きく左右されることは変わりません。森林を観察した際に、どのような植生なのか。どのように変化をしたのか。身近な自然を考えるきっかけとして、森林を散策してみてはいかがでしょうか。