神明・白山神社例大祭

  • 祭り:神明・白山神社例大祭
  • 開催日時:10月第1日曜日
  • 開催地:神明神社、白山神社(岐阜県瑞浪市大湫町398)
  • 生物:クロスズメバチ
  • 流域:土岐・庄内川上流

 

例大祭
 祭礼は神明神社において、笙(しょう)や篳篥(ひちりき)といった管楽器による音曲に合わせた神事の後、御神体を神輿にうつし、囃子連中を乗せた山車とともに白山神社に向かいます。白山神社でも神事をおこない、ここでまた御神体を神輿にうつし、再び山車とともに宿場町を練り歩き、神明神社において終了します。
 神明・白山神社例大祭は、祭りの日の2週間前に神明神社の大杉の注連縄の張替えから始まります。現在、神明神社の大杉は、2020年の豪雨により根元から倒木をしてしまいました。しかし、注連縄を再び締めたいという思いから、幹の根元部分が境内において保存されています。
 祭りの日にだけに各家庭で作られる料理として「箱寿司」がありました。木枠に寿司飯を敷き、「へぼ」と呼ぶクロスズメバチの煮付けや卵焼き、しいたけ等を乗せます。木枠を何段か重ねて固定することで押さえて箱寿司(押し寿司)が完成します。かつては特別な日に食べるものでした。しかし、現在は食べることはほとんどなくなりました。これと似た習慣として、10月第2日曜日におこなわれていた瑞浪市釜戸町宿地区の神明神社例祭でも、かつては祭りの後、「しんこ」と言って、蜂を揚げたものを持ち寄って食べたということです。

出典:岐阜県の祭り・行事総合調査報告書_岐阜県環境生活部県民文化局文化伝承課


〇クロスズメバチ
 クロスズメバチ科は、体長15㎜程度の小さく黒い蜂です。朝鮮半島、アジア大陸の一部、日本に生息しています。クロスズメバチ科は、平地より山地でよく見られ、ネズミやモグラ等があけた廃道や自然にできた地中の空洞に巣を作ります。女王蜂は春に巣作りを始め、働きバチを増やしていきます。秋には、直径10~30㎝の巣盤が5~10枚重なったものになり、秋から初冬に新女王蜂と雄蜂は巣立ちをします。
 大湫町ではクロスズメバチの巣の確保をまだ巣作りをし始めて間もない頃におこないます。竹の先にカエルやササミ等を刺し、臭いにつられて飛んできたクロスズメバチに目印を付けます。クロスズメバチが肉を持ち去る際に先細りさせた綿の先端を肉とともに銜えさせます。ハチは綿を銜えたまま、巣まで飛び、それを何人かでリレー式に追いかけ、巣を見つけます。巣は自宅に持ち帰り、巣が大きくなるまで飼います。やがて、大きく形成された巣から蜂の子を取り出して、食材としました。調査の限りでは、大湫町でへぼを食さない理由として、見つけるのも飼うのも手間のかかる為、巣を取る人がいなくなったという事を聴きました。また、クロスズメバチ自体を見ることがないという声や、食べようと思わないといった声もありました。

出典:中部地方におけるクロスズメバチ食慣行とその地域差_野中健一


〇SDGs学習の発展可能性
 郷土料理としての昆虫食は、馴染みのないものに変わりつつありますが、国際連合食糧農業機関では、世界的な人口増加や食生活の向上により、動物性タンパク質の需要が高まっており、昆虫は有望な飼料及び食材として紹介されています。利点は多くあり、生産コストが家畜より低く、栄養価が高いといった点が挙げることができます。かつてより身近な食材となる日は近いのかもしれません。