- 祭り:お水送り
- 開催日時:11月9日
- 開催地:水屋神社(三重県松阪市飯高町赤桶2507)
- 生物:クスノキ
- 流域:櫛田川上流
〇水屋神社のお水送りと大楠
水屋神社の「お水送り」の神事の歴史をみると、この地域に伝わる「国分け伝説」と大いに関わりがあります。垂仁天皇25年(紀元前51年)天照大神が当地に巡幸された際、この地に鎮座しておられた春日の神と議って川中の巨石を以って伊勢・大和両国の境とした伝承があります(慶長5年(1600)の関ヶ原合戦以降から伊勢領となりました)。地域の人々は今もこの巨石を「礫石」、また、その付近を「堺が瀬」と呼んでいます。
神社名(水屋神社)・所在地(赤桶)・特殊神事・(水取り)祭神(龍神姫)などすべてにわたって水との関わりがあり、当社の西方約700メートルのところには「閼伽桶(あかおけ)の井」があります。旧記・古文書の類にはこの「閼伽桶の井」の神水を二振りの桶に汲み、貞観元年(859年)より春日大社への奉納を始め、天正5年(1577年)の兵乱で途絶するまで約700年間、春日暦を刷るためのお水として奉納していました。平成14年(2002年)に425年ぶりに復活し、以来毎年、春日大社のご本殿をはじめ境内全てのお社に神水として奉納しています。
祭りは、10人ほどの下帯姿の男性と白装束の女性が禊ぎ場で体を清めた後、境内に入って神事をおこなう場面から始まります。神事を済ませた後、松明を先頭に神主と男女が閼伽桶の井まで御水を汲みに
出掛けます。御水は社殿に置かれた2つの赤桶に入れられ、春日大社へと送られます。春日大社では、「神事用の御神水」として大切に活用されるということです。
以上の春日大社の安在所として祀られた水屋神社の御神木が、水屋の大楠です。樹高35m、幹周り16m、樹齢1000年を越えると推定されるクスノキとしては全国12位の巨木で、三重県の天然記念物に指定されています。
出典:水屋神社_http://www.mizuya.org/index.shtml
〇クスノキ
クスノキは、本州中南部から四国、九州、沖縄、済州島、台湾、中国南部、インドシナに分布している。クスノキの葉から樟脳の香りがするなど、独特な芳香を持つことから「臭し(くすし)木」がその語源である。クスノキの葉や煙は防虫剤や鎮痛剤として用いられ、「薬の木」を語源とする説もある。クスノキ材は防虫効能から家具や仏像などにも広く使われてきた。
〇SDGs学習の発展可能性
地域の郷土史家の田端美穂氏の説では、9世紀の奈良は大仏や寺社の建立に用いられた大量の水銀が地下水脈に入り込んで、水が飲めない状況となっていた可能性をあったそうです。そのため、御神水をわざわざ遠くの水清らかな場所に求めたとのことです。
赤桶の水が御神水として選ばれたのは、元を質せば、春日大社の神と伊勢神宮の神が水屋の社近くで出会い、国分けをしたことから始まります。しかもその神話の地名が、松阪市飯高地区の各地に点在します。お水送りとその歴史は、松阪市飯高地区と春日大社、伊勢神宮を結ぶ郷土史や環境史の観点から郷土学習に繋げることができます。