- 祭り:五身縣祭り
- 開催日時:2月19日付近の日曜日
- 開催地:川添神社(三重県多気郡大治町栃原1481)
- 生物:クロマツ
- 流域:宮川上流
〇五身懸祭
五身懸祭は、2つの隊が地域を練り歩き神社前で合流後、弓射神事や苗松神事等をおこない、狩りの獲物や農産物が豊かに授かるように祈念したお祭りです。五身は、5柱の祭神を表します。
練り歩きは、その年の当番の区(栃原自治会と新田自治会よりそれぞれ選ばれる)が、狩衣姿に両手に扇子の先導のもと、酒や魚、ほでを持ち、それぞれの出発地点から練り歩きます。その際「まだらーく、まんざい(曼荼羅神よ万歳)」と掛け声を掛けながら歩きます。
持ち歩く「ほで」とは、拍子木切りにした大根に2本の串を刺し通し、串の先に緑と白の2種類の丸い餅を刺したものを一つとし、それを麦わらで作った「ほで」に365本刺したものです。
弓射神事では、的に当たるとその年は豊作になるといわれています。当番の区より選ばれた2人が矢2本を2回ずつ「太」と書かれた的に射ちます。兄当(えとう)と呼ばれる年長者が先に射ち、次に年下の弟当(おとう)が射ちます。
その後の苗松(なえまつ)神事では、神職達が3本の縄で固定された雄松(オマツ:クロマツの別名)の周りを「まだらーく、まんざい」を唱えながら3週周った後に縄を切り、幹が倒されます。田の水口に立てると豊作になるといわれる御幣がクロマツの先に付いており、参加者は倒れたクロマツから御幣を奪い合います。
出典:大台町観光協会_https://web-odai.info/information/information-8287.html
〇クロマツ
祭りで用いられるクロマツは、枝が幹に11段以上付いているものが選ばれます。クロマツは1年毎に枝を1段ずつ増やしていくため、下から数えて枝が11段の場合、そのクロマツは11歳ということになります。
クロマツの林を砂浜や砂丘でよく見る事ができますが、飛砂を抑制するための植林が由来となっています。マツ類は、日光を遮るものがない強光で、栄養を含んだ土壌がないような土地(土石流といった影響で植物や土壌が剥ぎ取られた状態)で、優先的に自生することのできる樹木です。土石流や噴火といった大規模な森林と土壌の消失がおこなわれた際も、マツ類をはじめとした植物により土壌がつくられ、やがて多種多様な植物が自生することができる森林へと代わっていきます。
海沿いにおける人の暮らしにおいて、海からの潮風や飛砂または波からの被害を軽減し、人を守る役割を果たすクロマツの海岸林ですが、クロマツをはじめとした多くのマツ類が枯れる被害があります。松枯れという現象は、「マツノザイセンチュウ」という線虫がカミキリムシを通して、マツの樹体内に侵入する事で引き起こすとされています。1905年に初めて確認されて以降、徐々に被害は増えていき、1979年に約243万立方メートルまで被害は及びました。その後、減少したものの予断を許すことはできません。
出典:図説 日本の植生_福嶋司 編
出典:林野庁_https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/matukui_R3.html
出典:関東森林管理局_https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/policy/business/hogozigyou/matsukui.html
〇SDGs学習の発展可能性
松枯れの被害の拡大や過程で不明な点が多いのが現状です。松枯れ被害防止の薬剤散布が問題になることもあります。マツを守るという事も大切ですが、本来、マツが自生できるのは限られた環境のため、淘汰されたという自然の成り行きとの見方もできます。目の前の変化に対応する事も大切ですが、生物多様性をより理解し、行動する事も大切なのかもしれません。