- 祭り:火鑽神事
- 開催日時:旧暦6月14日
- 開催地:津島神社・地蔵堂(豊田市坪崎町)
- 生物:アカマツ
- 流域:矢作川上流
〇火鑽神事
火鑽神事は、津島神社下にある地蔵堂において火を起こし、松明に灯したその火を津島神社に供え、また、火は地蔵堂の炉端において小豆飯を炊き、それを食べて無病息災を祈ります。津島神社坪崎町の集落がある地蔵堂でおこなわれますが、人口減少により、この集落には6世帯12人のみとなっています。現在、神事は途絶えかけており、不定期で開催しているとのことです。
神事には、アカマツの松明が用いられます。アカマツは、神事の半年から1年前に採取をおこない、乾燥させます。乾燥させたアカマツは木片の状態にし、細長く割った竹の「串」の先に藁で括りつけて、松明とします。
火口(ほくち)の材料となるホクチアザミ(地域創造のWEBサイトでは、ホクチアザミと紹介されていますが、文化財愛知県ナビのWEBサイトでは、ハバヤマホクチと紹介。)も同じく乾燥させ、揉み解し、火口とします。火口とは、火を起こした際に火種を大きくするためのものです。
ヒノキで作られた火鑽臼(ひきりうす:火を起こすための台)を男性4人が、同じくヒノキで作られた火鑽杵(ひきりぎね:摩擦熱を起こす棒)で揉んで交代をしながら火鑽をおこない、火を起こします。これは火が起きるまでおこなわれます。
出典:文化財ナビ愛知_https://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/minzoku/mukeiminzoku/kensitei/0817.html
出典:一般財団法人地域創造_https://bunkashisan.ne.jp/bunkashisan/23_aichi/7285.html
〇アカマツ
アカマツは、砂や岩ばかりで土壌に栄養の少ないといった瘦せ地や露岩地等で自生します。また、本来自生していた自然林の樹木を人が利用することにより、樹木がなくなり土壌が雨で流れ痩せ地となった結果、アカマツ林に置き換わる場合もあります。栄養の少ない土地でも成長するために、菌類と共生をおこない、互いに生成する栄養や水分を供給しあいます。アカマツ然り、多くの植物は菌類と共生することで知られており、アカマツと共生する菌類として、マツタケが有名です。
目に見えずらい生物多様性の損失に菌類が挙げられます。かつて、人の生活の身近にあったアカマツ林は、人工林への置き換わりや開発、環境変化による病気により、大幅に減少しました。これに伴い、共生や寄生するといった菌類も共に減少をしました。また、共生菌であるマツタケの減少には、アカマツの材としての利用減少が挙げられます。アカマツ林が更新されず、樹齢60年以内の共生に適齢のアカマツの減少や土壌の富栄養化等の原因が考えられます。
出典:図説 日本の植生_福嶋司 編
出典:キノコ栽培全科_大森清寿/小出博志 編
出典:森林の変化と人類_中静透/菊沢喜八郎 編
〇SDGs学習の発展可能性
森林の伐採から発達したアカマツ林ですが、人と生物の関わり合いからの結果のひとつとも考えられます。アカマツ林に限らず、多くの2次林や原生林が姿を消していく中で、目に見えている以上の生物多様性が、人知れず姿を消しているのかもしれません。アカマツが減少した影響を考えてみてはいかがでしょうか。