能登瀬のしかうち

  • 祭り:能登瀬のしかうち
  • 開催日時:4月下旬の日曜日
  • 開催地:諏訪神社(愛知県新城市能登瀬壱輪)
  • 生物:ニホンジカ
  • 流域:豊川上流

 

〇能登瀬のしかうち
 この祭りでは、雌雄2頭の模造鹿を弓矢で射ることで、野生動物からの農作物被害を保護し、豊作を祈願するものです。かつては、愛知、静岡、長野にまたがって各地でおこなわれていたしかうち行事ですが、現在は、新城市能登瀬と北設楽郡東栄町の月、布川、小林、古戸の5地区に減りました。
 能登瀬でおこなわれるしかうち行事では、例大祭の式典終了後に拝殿前の広場において、弓取り2人と矢取り2人の計4人が、田作りと種取りの神事をおこないます。その後、鹿討ちをおこないますが、模造鹿は、麦わらの胴体にシイの枝葉が挿してあり、足はシイの木、角はアオキでできています。これを雌雄2頭あり、雌の模造鹿には腹に丸餅が入っています。雄から討ち、2頭の模造鹿にそれぞれ1人9本の矢を放ちます。雌に18本目の矢を射終わると、雌の腹に入っている餅を参加者が奪い合います。

出典:新城市_https://www.city.shinshiro.lg.jp/kanko/minzokugeino/shikauchi.html


〇ニホンジカ
 ニホンジカは、日本に生息している野生のシカの総称であり、ベトナムから極東アジアにかけて分布し、険しい山岳地以外の草地や森林を中心に生息しています。日本で生息しているシカは地域により個体に変異があり、エゾシカやホンシュウジカ等は、ニホンジカの国内7亜種(生物分類で種より細かい区分)です。
 ニホンジカの分布域は、1978年から2018年までの40年間で約2.7倍に拡大し、全国各地で作物の摂食による農業被害や苗木の摂食といった林業被害と影響が出ています。また、森林生態系への影響が懸念されています。
 明治・大正以降になると各地で著しく減少したシカの個体数は、1980年代以降に回復と増加をしました。個体数の増加には様々な要因が考えられます。1905年に絶滅したニホンオオカミの影響がなくなった事。戦後の木材供給に伴い森林の伐採をおこなった結果、臨床が明るくなりシカの食糧である草が増加した事。農山村の人口減少に伴い、シカのストレスが減少した事といった可能性が挙げられます。これらにシカの本来の繁殖力の高さが相まったと考えられます。

出典:シカの生態誌_高槻成紀
出典:いきものログ_https://ikilog.biodic.go.jp/Investigation?invReq=life&life_id=309&eventremarks_id=135
出典:環境省_https://www.env.go.jp/press/109239.html


〇SDGs学習の発展可能性
 農林業の被害や、自然植生を変えてしまうほどの食害といった影響がでています。しかし、シカを取り巻く環境は、明治以降で急激に変化しています。環境に合わせ、個体数が変化をしたに過ぎなく、減少及び増加の原因は人の影響が大きいことは変わりありません。シカを目の敵にせず、生物多様性の役割、ジビエ料理や毛皮製品といった、シカとの関わりを考えていく事が必要ではないでしょうか。