八百津だんじり祭り

  • 祭り:八百津だんじり祭り
  • 開催日時:4月の第2土曜日・日曜日
  • 開催地:大舩神社(岐阜県加茂郡八百津町八百津4424)
  • 生物:フジ
  • 流域:愛知用水上流

 

〇八百津だんじり祭り
 岐阜県加茂郡の八百津は、木曽川舟運の始発点であり、人と物の交流の拠点で祭りも盛んになりました。祭りの際に曳かれるだんじりと呼ばれる山車は、本郷・黒瀬・芦渡の3組に分かれており、3つの組の3輌を合せると船頭は芦渡、船尾は黒瀬、胴中は本郷と大きな船の形になります。
現在はダム湖に沈んでしまいましたが、木曽川にかかる八百津橋のたもとには、かつての「川のみなと」である黒瀬湊がありました。また、黒瀬湊の上流には、錦織綱場という木材運搬河川の中流の要所に頑丈な留綱を張り渡して流送される木材をせきとめた場所があり、上流から辿り着いた木材は綱場で筏(いかだ)に組まれ、下流のまちに流送されました。
 筏を組むための縄として用いられたのがフジのツルです。フジのツルは、繊維が強いため、筏組みだけでなく、だんじりの柱を縛る縄としても使われており、フジの匍匐枝(ほふくし)と呼ばれる、地上を這うツル状の幹が用いられます。ツルは、匍匐枝のようにまっすぐ地面を這うものと、他の植物に巻き付くものがありますが、樹木に巻き付いたフジのツルは巻き癖が付いているため、力が加わると裂けやすいといわれています。八百津では、匍匐枝を「根フジ」、巻き蔓を「立ちフジ」と呼んでいます。

出典:祭礼事典・岐阜県_岐阜県祭礼研究会
出典:藤と日本人_有岡利幸


〇フジ
 フジはマメ科フジ属の植物であり、日本・東アジア・北アメリカに8 種ほど存在します。花やツルが注目されるフジですが、マメ科の植物なので、20 ㎝ほどの枝豆のような実がなります。この実は、乾燥してねじれることにより、中の種子を遠くへ弾き飛び出します。このような種子繁殖の方法と匍匐枝を四方へ延ばしていくクローン繫殖の2つの方法で分布を拡げます。
 樹木に絡みつくツル性植物は林業関係者にとってやっかいものです。幹にくい込んだツルは、材木としての形状を悪くし、ひどい場合には折損することもあります。一度くい込む程まで成長してしまったツルは取り除いた後も、材木には圧迫された跡が残り、材は材質・強度・加工の面で、問題があるといわれています。林業においてツルの巻き付きを放置した場合、樹木を圧迫することで枯死し、倒木の可能性もあります。
 他方で倒木は、森林に小さな空間を生み出すひとつの要因でもあります。暗い森に日光が差すことで、新たな植物の更新がおこなわれます。そして、新たな植物の更新がおこなわれることにより、関連する他の生物の多様性も維持発展すると考えられます。

出典:藤と日本人_有岡利幸
出典:森林生態学_藤森隆朗
出典:ヒノキ造林地におけるつる植物と被害_鈴木和次郎


〇SDGs学習の発展可能性
 八百津では、林業にとって大敵であるフジのツルを駆除し、尚且つ利用してきたのではないでしょうか。人と自然の関係は、人の手による自然の破壊、人の利用しやすい自然環境(里山など)、手つかずの自然保護など、さまざまな関係があります。人と自然との共生について考えるきっかけにしてみてはどうでしょうか。