大鏡餅神事

  • 祭り:大鏡餅神事
  • 開催日時:1月2日
  • 開催地:生桑長松神社(三重県四日市市生桑町2024)
  • 生物:ホンダワラ
  • 流域:海蔵川中流

 

大鏡餅神事
 神事は、1月2日の早朝に、毎年順に務める当番の家から特殊な形状の鏡餅を生桑長松神社に奉納する行事です。餅は神社で作り、当番の家で組み立てます。鏡餅は、他の供え物とともに供えられ、神主により祝詞があげられます。翌日に餅は、分解されて長持で神社まで運搬し、再び組み立てられた餅は本殿前に供えられ、神事がおこなわれます。鏡餅は神事の後、切りわけられて参詣者に配られます。
 鏡餅は、二段の円筒形の餅の上に、鳥が羽を広げたような形状の餅を2段、羽が縦横に交差するように重ね、一番上に串柿とダイダイを乗せます。鳥の羽部分にはタワラモ(ホンダワラの別名)を垂らします。この鏡餅を2対作ります。
正月に飾る鏡餅は、地域により特色があり違いはあるものの、一般的には三方に半紙、ウラジロ(ウラジロ科のシダ植物)、ユズリハ(ユズリハ科の常緑広葉樹)、コンブ(コンブ科の海藻)を敷きます。その上に重ねた大小の平たく丸い2つの餅を置き、ダイダイ(ミカン科の常緑広葉樹)やスルメ等を載せて、紙を折った四手を垂らします。

出典:四日市市_https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/contents/1001000002646/index.html
出典:ものと人間の文化史 もち_渡部忠世/深澤小百合


〇ホンダワラ
 地域によっては、正月飾りにも用いられるホンダワラは、ヒジキやアカモクと同じホンダワラ科の海藻です。干潮の際でも、干上がらないような浅い海の岩上に生育しており、長さは1m以上成長します。
 植物の茎に当たる軸の部分が捻じれており、断面は主に三角形になっています。海水中で浮力を得て立ち上がった状態になるために、気泡と呼ばれる小さく丸い器官がいくつも付いています。
 波により、切れたり剝ぎ取られたりした海藻や海草は、流れ藻として、海面を漂います。海底の藻場とは違い、広い海面を漂う流れ藻は、多種多様な生物の隠れ場や産卵の場として、大事な役割を担います。

出典:ネイチャーウォッチングガイドブック海藻_神谷充伸


〇SDGs学習の発展可能性
 流れ藻には、さまざまな種類の海藻や海草がありますが、ほとんどはホンダワラの仲間です。しかし、ホンダワラの数は減っており、入手が困難となったため、生桑長松神社の神事には、現在、ホンダワラの代わりにコンブが用いられています。祭りといった文化や自然環境は、時代に合わせて変化をします。しかし、昆布のままではなく、ホンダワラが飾ることのできるような環境を取り戻し、再び飾ってみるのもいいのかもしれません。