- 祭り:須成祭り
- 開催日時:8月の第1土曜日・日曜日
- 開催地:冨吉建速神社・八劔社(愛知県海部郡蟹江町須成門屋敷上1363)
- 生物:ヨシ
- 流域:木曽川下流
〇須成祭
須成祭は、愛知県海部郡蟹江町における疫病退散を祈願する祭りです。さまざまな儀礼や神事が100 日かけておこなわれることから、「100 日祭」とも呼ばれています。主たる祭事は、8
月第1 土曜の夜に、囃子を奏でながら提灯に彩られた巻藁船(まきわらぶね) が蟹江川を上る「宵祭」。戻ってきた巻藁船が提灯を外し人形に置き換え、和紙で作った梅と桜の花に飾られた車楽船(だんじりぶね)
へと模様替えをして、翌朝に再び川を上る「朝祭」です。
朝祭の22 日前、祭船に乗ってお囃子をおこなう子役を依頼する「稚児定め」で100 日祭がはじまります。朝祭の7 日前にはヨシを刈取り、御神体となる葭の束「神葭(ミヨシ)」がつくられます。朝祭の翌日早朝に、災厄を封じ込めた神葭を蟹江川へ流す「神葭流し」をおこない、川から引き上げた御神葭を祀る「棚上がり」、朝祭の77
日後に御神葭を燃やす「棚下し」で、全ての行事は終了します。
かつては広大な湿地帯であった現在の蟹江町付近には、マコモ、ヨシ、ヤナギなどが自生しており、須成祭には、これらの湿地特有の植物が多く用いられています。
出典:須成祭総合調査報告書
〇ヨシ
ヨシは、水質浄化機能を備えた干潟にとって重要な植物です。日本書紀にまとめられた国譲りの神話では、「日本」は「豊葦原千五百秋瑞穂国」(ヨシと稲の豊かな国)と呼ばれていたとされ、古くからヨシが地域に身近な存在であったことがわかります。須成祭では「葭」という漢字が用いられていますが、「葦(アシ/
ヨシ)」と書く場合が多く、アシは「悪し」に通じるため、対語の「良し(ヨシ)」と呼ばれるようになったといわれています。
ヨシは、陸地と水の境界付近に生えるイネ科で多年草です。高さが1 ~ 3m にもなり、水底に張った根は地中60cm まであります。ヨシ同士の地下茎と根が絡み合うことで、ヨシは波や流れに倒されづらく、消波機能や土の緊縛機能を発揮します。これにより、岸辺の土砂流出を防ぐこともできます。
また、ヨシと同じくイネ科であり、祭りで用いるマコモ(真菰)は、葭刈神事の際に舟から投げる「ちまき」の縄に使用します。ちまきは、刈り取ったマコモを干して編んだ縄に3センチほどの長さに切った長方形の餅を結んで作ります。昔は地域で自生しているマコモを使っていましたが、昨今ではその数も減り、特定の場所で生育されたものを使っています。
出典:改定新版日本の野生植物2
出典:水生雑草が有する機能の活用_沖陽子
〇SDGs学習の発展可能性
ヨシの水質浄化作用を昔の人は知っていたのでしょうか。ケガレをはらい、身を清めてくれるご神体となったヨシ。身体だけではなく、私たちの環境そのものを守ってくれていることにも感謝がささげられていたかもしれません。