鯨船行事

  • 祭り:鯨船行事
  • 開催日時:8月14・15日
  • 開催地:鳥出神社(三重県四日市市富田2丁目16−4)
  • 生物:クジラ
  • 流域:海蔵川下流

 

〇鯨船行事
 鯨船祭りで親しまれている「鯨船行事」は、鯨を豊漁と福を招く象徴として継承されてきたとされ、三重の北勢地域と熊野地域で現在も続いています。熊野地域では江戸時代に捕鯨がおこなわれていましたが、富田地区がある北勢地域では、捕鯨がおこなわれた記録はありません。北勢地域の鯨船行事の起源は定かではありませんが、捕鯨技術の発展の地とされる知多半島の師崎との関係などの説があります。
 富田地区の鯨船行事では、船に彫刻と幕で飾られた屋形が設けられ、北島組・中島組・南島組・古川町の4 台の山車が使用されます。祭りは8 月14・15 日に、山車とクジラがそれぞれの組のまちを練り歩く「町練り」、鳥出神社に奉納する「本練り」があります。練りでは山車に乗っているオドリコと呼ばれる少年が、竹や漁網で作られたクジラをしとめる構成になっています。
 富田地区には、捕鯨に関わる民話があります。親子の鯨を漁師たちが仕留めたことにより、そのたたりとして不漁が続いたというものです。伊勢神宮で親子鯨の霊を慰めると、魚が戻ってきたので、それ以降、鯨を捕ることをやめたという言い伝えがあります。

出典:三重県総合博物館第31回企画展「集まれ!三重のクジラとイルカたち」


〇伊勢湾とクジラ
 世界・日本のクジラ:鯨類は、歯を持つ「ハクジラ類」と、歯はなく上顎にクジラヒゲを持つ「ヒゲクジラ類」に大別されます。世界には鯨類が約83 種いるといわれています。鯨類の中には、一般的に言われるイルカも含まれています。鯨類のうち、国際捕鯨委員会(IWC)が管理対象としている鯨は、大型の鯨類で13 種( その後の研究により別種とされる等により実質17 種) です。現在、日本で捕獲されているIWC 管理対象の鯨は、ミンククジラ・ニタリクジラ・イワシクジラの3 種です。ミンククジラは、世界中の海に分布しており、最大体長は11 m、寿命は50 年といわれています。ニタリクジラは世界中の熱帯から温帯の海に分布しており、最大体長15.5 m、寿命は不明です。この2 種が日本で主に食されています。
 伊勢湾と捕鯨:日本の捕鯨の歴史は三つの時代に分けられます。①「初期捕鯨時代」:漁師たちが臨時的に組織を整え、鯨を地域に分配。②「古式捕鯨業時代」:鯨の産物を商品として流通させるため、専業の捕鯨集団「鯨組」を組織。③「近代捕鯨業時代」:ノルウェー式砲殺捕鯨法による捕鯨。このうち、古式捕鯨の始まりの地は、1570 年代初頭の伊勢湾沿岸といわれています。平安時代末期に水軍が活躍し、組織的な操舟技術と高度化した鉄製の武器が古式捕鯨につながったと伝えられています。
 三重県のクジラ:捕鯨が盛んにおこなわれていたのは熊野地方です。三重県では、18 種のハクジラ類と7 種のヒゲクジラ類の合計25 種のクジラを海で見ることができます。


〇SDGs学習の発展可能性
 捕鯨の賛否は国際的に激しく対立しています。過激な反対派に眉を顰める日本人は多いですが、賛成派も単体派も冷静に科学的データに基づいて適切な保全と利用がなされることが重要ではないでしょうか。