藻刈神事

  • 祭り:藻刈神事
  • 開催日時:5月21日
  • 開催地:二見興玉神社(伊勢市 二見町江575)
  • 生物:アマモ
  • 流域:宮川下流

 

〇藻刈神事
 藻刈神事は、5月21日に「無垢塩大麻」として用いられる海草を刈り取る神事です。「無垢塩大麻」は、祈祷の際の祓いにおける御幣(ごへい)という祭具に用いられます。
 海草は、二見興玉神社の海岸に聳える立石(夫婦岩として知られる)に張られた注連縄の結界の先、沖合700メートルの海中に鎮座する岩を目印に採取されます。この岩は、興玉神石(おきたましんせき)といわれ、遠い昔、倭姫命が二見浦に船で訪れた際に、猿田彦大神が現れた霊石であり、猿田彦大神出現の霊跡とされています。以前には、岩は海上にありましたが、宝暦年間(西暦1751年から1764年)の地震により海底へ沈下しました。
 神事は、本殿における祭典の後に、神職らが船に乗船し、興玉神石付近を三周します。供物を海中に捧げた後、手ガマを用いて興玉神石より海草を刈り取ります。
 無垢塩大麻による祓いを受けられない参拝者に対しは、身に付ける事の出来るように小分けされた海草を「無垢塩草」として、神社では販売しています。

出典:二見興玉神社_https://futamiokitamajinja.or.jp/


〇アマモ
 アマモは、日本各地の沿岸の浅い海で生育しています。アマモという名前は、地下茎(地下にのびる茎)をかじると甘みがある事が由来です。無垢塩草はアマモの別名であり、昔に塩を取るために用いられた事が由来です。
 藻刈神事で刈り取られるアマモは、アマモの中でも5~7mまで成長するタチアマモという種類であり、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に指定されています。
 アマモなどの海草(種子植物)やアラメ・カジメなどの海藻(藻類)が茂る場所を藻場といいます。藻場は多くの種類の生き物の餌場や住処、産卵場所などになるため、海のゆりかごともいわれています。
 しかし、埋め立て等による沿岸域の開発、農薬等による化学物質の流出といったその他多くの複合的な理由により、藻場は大幅に減少をしました。

出典:ネイチャーウォッチングガイドブック海藻_神谷充伸
出典:ブルーカーボンとは何か_枝廣淳子


〇SDGs学習の発展可能性
 近年、海が吸収した二酸化炭素を固定するブルーカーボンが注目されています。これは人為的な二酸化炭素の排出量から森林管理等による人為的な二酸化炭素の吸収量を差し引いて、二酸化炭素の排出量を実質0にするカーボンニュートラルのひとつであり、海洋性の植物による二酸化炭素の吸収と貯留をいいます。生物多様性と気候変動に対する働きかけとして、藻場の重要性が増してきています。